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農と食を結ぶ情報誌「とさのうと」
vol.40
天敵昆虫のタバコカスミカメが好んで住む、クレオメという植物。花はまるで観賞用のような華やかさ。
ありがとう。生きがいの、農業。
 津野町の桑ヶ市(くわがいち)という山間部の集落で、土佐甘トウ(甘長トウガラシ)を雨よけ栽培している保川保(ほかわたもつ)さん。土佐甘トウは4年目とのこと。これまでに他の作物も経験しており、土のこと、肥料のことなど、いろいろと試すのが生きがいだと言います。収穫中の雨よけハウス内では、天敵昆虫のために植えた植物が、美しく花開いていました。「この天敵は自然界にいる昆虫で、去年、須崎市のシシトウ農家でもらってきました。冬越ししたから、今年はうちから皆さんにおすそ分けもしたんですよ」。
 
 ふと見ると、ハウスの柱に手書きの文字が。「ありがとう」。これは何ですか?「ありがとうという言葉には、力があります。今年は上出来、そう思ってやらにゃあ、作物が難儀なきね(つらいからね)、作物の気持ちに寄り添って作ります。肥る勢いを見るのが、私の勢い(笑)」。気負いのない人生哲学に、スタッフ皆が深くうなずきました。
高知県では土佐甘トウを年間出荷しています。夏場の出荷を担うのが、津野町など山間部です。ハウスのサイドや天井を開けて、雨が降れば天井を閉める「雨よけハウス栽培」をする保川保さん。研究熱心な作り手です。79歳(取材当時)にして先輩の教えを乞う謙虚さの原点は、チャレンジ精神。
 地域の若い生産者が、農業でしっかり食べていけるようにと願う保川さん。「農業を好きでたまらん、面白い。そういう生き方で、一生を楽しく。そして、作物を地域に根づかせてくれた先輩たちに感謝して、収穫量を上げている人に教えてもらい、真似をするのも大事です。自分の力だけでやろうとしてもだめ」。

 夏場は生産の最盛期、でもその分生産者の収入は下がります。保川さんは「なるべく安くして、消費者に喜んでもらったら良い。高いときも買ってくれるから、今は儲けたときのお返しと思えば気が楽です。食材を作るということは、主婦の目で評価されること。だから喜ばせてあげたい」と、すがすがしい風を吹かせてくれました。