LINEで送る
農と食を結ぶ情報誌「とさのうと」
vol.36
大島地区の共同選果場で。細やかに等級で分け、パックに詰めていきます。
五台山、聖なる山の恵み。
  6月はスモモの盛りです。甘酸っぱく、野性味のある爽やかさ。5月、梅雨のはしりが始まる頃、五台山の大島地区で収穫を取材しました。五台山から高須一帯でスモモを栽培する4軒の生産者が忙しく作業していたのは、大島地区の共同選果場。ほんのり赤味が差したスモモの多くは、五台山北斜面の畑で育ったもの。かつては全国一の早出しで知られた、明治後期からの歴史ある産地です。

 さて、標高150m足らずの五台山、数百年前は湾の中の島でした。山頂には高知県立牧野植物園や四国88カ所霊場の竹林寺があります。ご本尊は秘仏の文殊菩薩で、ご開帳は50年に一度。大島地区のスモモを入れる箱には、文珠菩薩にあやかり、〇に文の字を入れた「マルブン」のマークが。選果場の前は竹林寺への古い遍路道で、歩いて山を上がる細い道もあります。ちょうど取材を終えたお昼頃、小雨が時折降る中を、竹林寺へと一人で歩く男性のお遍路さんに出会いました。30番札所の善楽寺から、31番の竹林寺へ。写真を撮らせていただき、旅の無事を祈ったことです。
上/四国霊場第31番札所竹林寺は日本三大文殊菩薩の寺としても知られます。 下/歩き遍路をする外国人も増えてきたこの頃。善楽寺から竹林寺へ、道中の無事を祈って見送ります。
 五台山の名は、中国にある文珠菩薩の聖地・五台山に似ていると、かの行基が名付けたといわれます。夢窓国師(この当時は夢窓疎石)が1318年、土佐に来て五台山の山腹に開いた吸江(ぎゅうこう)庵は名僧を輩出し、聖なる山として名を馳せたのでした。竹林寺の庭園は、京都の天龍寺や西芳寺(苔寺)などの作庭でも知られる夢窓国師の作と伝えられます。
 スモモは古来、花を愛で、食用・薬用として大事にされてきました。6月は1年の前半が終わる頃。「夏越しの払い」とつぶやきたくなる神々しさすら覚えます。