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農と食を結ぶ情報誌「とさのうと」
vol.35
うま味がたっぷりの高糖度トマト。おいしさのバロメーターであるスターマークやベースグリーンが出ています。
苗から作って、手塩にかけて。
 冬春トマト(高糖度トマト)の取材で何度か訪れた、香南市夜須町の清遠秀史さん。とさのうとではさまざまな品目を取材していますが、生産者が種播きして苗から作る野菜は少ないので、清遠さんには苗の鉢上げも取材させていただきました。

一般に「苗は半作」といわれ、イメージどおりの作物を育てるには、丈夫な、栽培方法に合った長さや根張りの苗があってこそです。清遠さんの育苗用プレートにたくさん顔を出している苗はどれもすくすく育っており、これがあのトマトになるのかと不思議なほど。
収穫は11月中旬から翌年6月まで。8月中旬に種を播き、ポットに植え替える鉢上げまでは倉庫内の苗床で日光から守ってきました。(香南市夜須町)
左/表面がギザギザした、生命力を物語るトマトの種。ここからが始まりです。 右/雨が多い夏だったので、苗はいつもより根の張りが少ないということでした。
鉢上げ、つまりポットへの植え替えは手で抜いて植えるという、アナログな作業です。大きい苗から順に使い、指でポットの土に穴を開けて深めに植えます。その分、本番の定植では深植えをしないのだそうです。高糖度トマト、いわゆるフルーツトマトは、土の下に防根透水シートを敷いて、限られた根に対して必要な水分、時には水を制限して育てます。

一緒に作業していた母の佐都喜(さつき)さんは、手にたくさんの苗を持って、サッサッと進めていきます。「苗は弱々しく見えても強いんです。途中が切れても育つぐらいです」。定植するまでは、専用ハウスで育てます。一帯は台風や豪雨で冠水することが多い地形。床から1m上げて、通気性を良くする工夫をしていました。これによって苗の成長もそろうそうです。「定植したら、ぐんぐん育ちます。一番恐いのは、台風!ここは5年に1度は水が来るから、9月上旬の定植後に浸かったらアウトです」と穏やかな表情で話してくれた清遠さん。職人技で手塩にかけて育てるトマトは、消費者が喜んでくれる味を何より一番としているそうです。