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農と食を結ぶ情報誌「とさのうと」
vol.34
何かというと集まれる「美喜子お姉さん」の台所。美喜子さんは集落の女性にとってお姉さんのような人なのです。(四万十町昭和三島)
忙しく暮らすのが、幸せ。
 ナバナの取材で、四万十川と共に暮らす集落を訪ねました。四万十町昭和にある三島、さらに字が轟(とどろ)という集落です。林茂さんと美喜子さん夫妻。冬はナバナ、夏はシシトウ、そしてお米を作り、近所の5軒による味噌組合が伝統の「とどろみそ」を造っています。豆腐やこんにゃくも自家製です。

 取材の後、スタッフ一同、居心地の良い台所に通され、お茶をいただきました。ちょうど、近所に住む妹さんと家族も来ています。妹さん、帰省中の娘さん、孫の女の子。その団らんの輪に入れていただいたのです。美喜子さんは近所から嫁いだので、いわば轟集落ぐるみで親類のようなもの。

 南に面した明るい台所からは門口が見え、土間なので外からすぐ入れます。きょうが特別なのではなく、寒い日には「コーヒー飲みに来んかえ」と誘い、ストーブを囲んでよもやま話をするのだそう。夏には「涼みに来んかえ?」になるのでしょう。

 こんな、めりはりのある忙しさが、轟の活力源なのでは。「まあ忙しいことよ、ここは。仕事する轟で通っちゅう」と美喜子さんが笑います。近隣の集落では、「轟へ嫁に来るな、轟から嫁をもらえ」と言われるほど。四万十川の中州を生かした三島の広い農地は、集落の人達がスコップを手に開拓したもの。川向こうには共同で営む直販所もあって、とどろみそや野菜などを出しています。四万十川名物の火振り漁に熱くなる夏の夜も待ち遠しい茂さんです。

 また、「手がえ」という、共同体で助け合う習慣も残っています。農作業の節目だけでなく、一日の仕事が少し早く終わったら、他の人の畑を手伝ってあげる、大きな家族のような轟の暮らしです。
左/半世紀続くロングセラーの「とどろみそ」。田植えの前に仕込みます。 右下/沈下橋と車の橋、JRの鉄橋が1カ所で見られる三島。「沈下橋ができるまでは交替で舟の渡し守をしました。今は考えられんほど便利になりましたよ」と茂さん。