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農と食を結ぶ情報誌「とさのうと」
vol.33
掘り起こし、立派なサトイモを収穫する竹村幸子さんこと、笑子さん。赤芽芋は高知県の食文化に欠かせないサトイモです。ここではお雑煮にも入れるのだそう。(津野町杉ノ川)
二つの名前で、元気です。
  津野町の杉ノ川でサトイモ(赤芽芋)を栽培している、竹村幸子さん。代々種芋を保存して植えてきた、貴重なサトイモです。畑仕事が生きがいであることが、取材中も伝わってきました。

ところで、竹村さんには、名前が二つあります。生まれたときの名前が幸子さんで、もう一つの名前が、笑子さん。周囲からは、えみちゃんで通っています。こうした風習は高知だけでなく各地にあるのでしょう。幼少時に病気などをすると、無事に育つことを願って、別の名前を付けてもらうのです。竹村さんは、そういうことが普通にあった、最後の方の世代かもしれません。

竹村さんが生まれたのは、ここから少し離れた杉ノ川の別な集落だそうです。そこでは、鍛冶屋さんが二番目の名前を付ける役目だったとか。名付けをする役の人がいたことを知り、なるほどと思いました。戦後の高度成長期は子どもも多く、山はとてもにぎやかだったと聞きます。竹村さん夫婦は冬場、出稼ぎの土木作業にも行き、一生懸命働いて子育てをしてきたということです。

お家の石垣にはサボテンやお茶の木が植えてあり、小道に小菊が優しく咲いていました。高知の山間部は和紙の原料栽培が盛んだったので、この辺りの集落でも、15年ほど前までは、冬には紙の原料になるコウゾやミツマタを皆で集まって甑(こしき)で蒸す作業をしていたそうです。

大事に育てた赤芽芋、杉ノ川ではお正月のお雑煮にも入ります。今度収穫する頃には、そろそろ年末の準備を考える時期になっているのでしょう。ひょんなことから出てきた別の名前から、暮らしのことやこれまでのお話も聞かせていただき、心を温めて帰ってきました。
お家のそばにある畑。あれこれの野菜を毎日世話するのが、生きがいです。