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農と食を結ぶ情報誌「とさのうと」
vol.21
花粉を集める大仕事、ナシ農家さん
10月が来て、みずみずしくて丸い大きな新高梨を食べる喜びの裏には、あまり知られていない苦労もあります。新高梨の産地、針木にある石黒康誠さんの梨園で、ナシは品種の違う花粉が付かないと実らないことを知りました。そのため、春に花粉を採取する作業が欠かせません。

ナシの開花は桜の花が終わるころです。花粉が雄しべの先端の葯(やく)から出る前に、花を摘み取って集め、人の手で花粉だけを取り出す作業をされていました。ここでは花粉採取は馬次郎という品種を使っています。花粉はこの時期に集めておかないと、来年の受粉で前半に使う花粉も手に入りません。中国産の花粉も吟味して使うとはいえ、4月初旬は短期集中の夜なべ仕事に追われます。

そこで登場するのが、専用の機械です。今までにも、とさのうとの取材では、いろいろな機械を目にしてきましたが、開葯機なるものがあったとは。農業機械は奥深いです。
作業場は収穫シーズンには選果場となります。4月はお花畑のよう!
花びらや葉・茎を除いたら、葯精選機にかけて手回しで先端部分を切り取り、ふるいにかけます。
上/開葯機は小さいですが高価な機械。そしてトレー1段分の花粉を集めるのに、いったいどのぐらいの花が要るのかと気が遠くなります。下/トレーの中の葯から出た花粉。
機械は3種類あり、まず最初に花びらや葉と茎を取り除く機械へ。次に、葯精選機へ入れて、葯のある雄しべの先だけを取ります。ここで、目の粗いざるでふるい、葯以外の部分を飛ばします。そして、赤い色をした小さな葯をトレーに並べ、開葯機へ入れて1日ほどおくと、文字通り葯が開いて花粉が出てくるのです。花粉はグレーがかった色をしています。さらに細かい目のざるでふるい、花粉だけをより分けて保存します。

作業場の倉庫には馬次郎の花がカーペットのように敷き詰められ、ものすごく夢のある景色なのですが、花粉を取り出す作業の細かさには、つくづく頭が下がりました。剪定や水など栽培面の管理技術とはまた別の、欠かせない大事な作業があってこその実りです。